この仕事を始めた頃、先輩からこう言われました。
「まず植物を覚えないといけない。」
20歳頃の私にとって、植物はとても遠い存在でした。
知っている植物といえば、せいぜいチューリップくらい。
当時の私は「デザインの仕事がしたい」と思っていましたが、選んだ仕事は外部空間のデザインでした。
そして外部空間には、植物が欠かせません。
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最初は先輩に教わりながら植物を覚えました。
「今はこの樹種が人気だよ。」
「これを使うとお客様が喜ぶよ。」
そんな会話をしながら、ホームセンターやナーセリーに通い、図鑑を開いては植物を覚えていきました。
けれど、知識は増えても、自分が本当に美しいと思える空間にはなかなか近づけませんでした。
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そんな時に出会ったのが『鎮守の森』という考え方でした。
大型商業施設などで、その土地の近くにある山や森から種を採取し、苗を育て、森を再生していく取り組みです。
なぜそれが良いのか。
その土地に自然に育っている植物は、長い時間をかけて環境に適応してきた存在だからです。
人が無理につくった景色ではなく、その土地に最もふさわしい景色。
そして時間が経てば、自然淘汰によって無理なく森が育っていく。
私はそこに技術以上のものを感じました。
それは一つの哲学でした。
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10年ほど前、アメリカやカナダを訪れた時のことです。
お土産を買おうとデザインショップに入ると、並んでいる商品は日本の百貨店にもあるものばかりでした。
オランダで娘へのお土産にミッフィーのぬいぐるみを買ったこともあります。
ところが帰国後、博多駅のデパートで全く同じものを見つけました。
娘からは、
「本当にオランダに行ったの?」
と疑われたほどです。
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世界はどんどんグローバル化しています。
植物も同じです。
少し前までは海外の珍しい植物は特別な存在でした。
希少で、珍しくて、それだけで価値がありました。
しかし私は時々考えます。
「それは本当にこの場所を美しくしているのだろうか。」
と。
もちろん否定するつもりはありません。
ただ私には、そうした植物が時々どこにも根を張っていない「根無し草」のように見えることがあります。
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私は子どもの頃故郷の
鹿児島の霧島の山の中で遊びました。
森の中には誰も知らないような場所があり、
沢の水が流れ、
木漏れ日が差し込む。
そんな景色を見ながら、子どもながらに「美しい」と感じていました。
今思えば、あの体験が私の原風景だったのかもしれません。
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世界には魅力的なブランドがあります。
例えば、ホテルブランドの
Aman Resorts。
そして植物や自然との関わりを大切にする
Aesop。
彼らが大切にしているのは、単なる高級感ではありません。
その土地にある素材。
その土地に育つ植物。
その場所にしかない空気。
そうした足元の価値です。
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私たちは遠くにあるものに価値を感じがちです。
けれど本当は、毎日見ている景色の中にも価値があります。
地域の植物。
地域の石。
地域の風景。
そこに目を向けることで、その場所らしさが生まれる。
私はそう考えています。
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植物には多くの研究やエビデンスがあります。
けれど、それ以上に私が大切にしたいのは「筋の通ったデザイン」です。
その土地にある自然を理解し、
地域の素材を使い、
そこに住む人の暮らしを重ねていく。
庭は単なる装飾ではありません。
人が暮らす場所です。
だからこそ、その人らしさと、その土地らしさの両方が必要なのだと思います。
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私たちの会社のコンセプトは、
「暮らしの足元を整える」
です。
そのためにまず必要なのは、新しいものを探すことだけではなく、
自分たちの足元にある自然を見直すこと。
そこから本当の豊かさは始まるのだと思います。














