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建物から線を引く。なぜ外構だけで考えてはいけないのか

家づくりを考えるとき、多くの人は建物を先に考えます。

間取りを決めて、外観を決めて、住宅ローンを組んで、最後に外構を考える。

しかし本来、建物と外部空間は切り離して考えるものではありません。

私たちが設計する際に大切にしているのは、「建物から線を引く」という考え方です。

なぜそう考えるのか。

今日はその理由についてお話ししたいと思います。


私が業界に入った頃に教わったこと

私がこの業界に入った頃、まず渡されたのはエクステリアメーカーのカタログでした。

「この中から建物に合うものを選んでください。」

そんな教え方でした。

当時はガーデニングブームの真っ只中。

レンガのアプローチや曲線の花壇、レンガを積み上げて高さを変えたデザインが人気でした。

もちろんそれ自体が悪いわけではありません。

しかし今振り返ると、そこには大きな違和感がありました。

なぜなら、建物との関係性がほとんど考えられていなかったからです。

建物はシンプルなモダンデザインなのに、庭だけがヨーロッパ風。

建物は水平垂直で構成されているのに、外構だけが曲線だらけ。

当時は言葉にできませんでしたが、「何かが違う」と感じていました。


建物にない線を入れると統一感は失われる

その後、様々な施工事例や建築雑誌を見る中で気付いたことがあります。

美しいと感じる空間には共通点がありました。

それは、

建物から軸を引いていること。

建物の中に存在しない線を外部空間に持ち込むと、全体の統一感は崩れてしまいます。

逆に建物が持つ水平ラインや垂直ラインを外部へ延長すると、建物と庭がひとつの空間として見えてきます。

最近はドローンによる空撮も簡単にできるようになりました。

上空から見ると、その違いはさらに明確です。

建物と外構が別々に設計された空間は、どこか落ち着きがありません。

一方で建物から軸を引いている空間は、全体が自然にまとまって見えます。

これは上空だけの話ではありません。

人が日常的に見る地上の目線でも同じです。

言葉では説明できなくても、人は無意識に「整っている」「落ち着く」と感じています。


水平垂直が生み出す安心感

住宅を見ていると、多くの建物は水平と垂直で構成されています。

窓。

外壁。

屋根。

軒。

玄関。

これらはほとんどが直線によって整理されています。

しかし外構業界では昔から、

「高さに変化を付ける」

「リズミカルにする」

「曲線を使う」

という考え方も多くあります。

確かに動きは生まれます。

しかし私は、構造物に過度な動きを与えるよりも、まずは安定感をつくるべきだと思っています。

なぜなら、人は安定した空間に安心感を覚えるからです。

動きや変化は植物が担ってくれます。

風で揺れる葉。

季節によって変わる色。

伸びていく枝。

落葉樹が見せる四季の変化。

こうした自然の変化は、人工的に作られた曲線や高低差よりも豊かで心地よいものです。

だから私は、

構造物は秩序をつくる。

植物は変化をつくる。

そう考えています。


外構だけを考えても良い空間にはならない

さらに言えば、建物から軸を引くだけでも十分ではありません。

建物の要素をそのままコピーしても、面白い空間にはならないからです。

大切なのはもっと広い視点です。

例えば、

  • 地域の風景
  • 周辺の自然環境
  • 土地の高低差
  • 光の入り方
  • 風の流れ
  • 住まう人の趣味
  • 家族構成
  • 将来の暮らし方

こうした様々な要素が重なり合って空間はつくられます。

建物だけでもない。

庭だけでもない。

植物だけでもない。

そこに暮らす人だけでもない。

それらすべてが関係しながら、一つの居場所が生まれていきます。


「これが欲しかった」が生まれる空間

完成した瞬間に写真映えする庭はたくさんあります。

しかし本当に良い空間は、住み始めてから価値が分かります。

朝カーテンを開けた時。

休日に庭へ出た時。

雨の日に窓から眺めた時。

季節の変化を感じた時。

そんな何気ない日常の中で、

「この家にして良かった」

「この庭があって良かった」

そう感じてもらえることが大切だと思っています。

それは写真だけでは伝わらない価値です。

だからこそ私たちは、建物だけでもなく、庭だけでもなく、

人の暮らしそのものを考えながら設計をしています。


建物から線を引くということ

私にとって「建物から線を引く」という考え方は、単なるデザイン手法ではありません。

建物と庭をつなぐためのフレームです。

まず建物から軸を取り、秩序をつくる。

その上に地域性や自然、住まう人らしさを重ねていく。

そうすることで初めて、暮らしに寄り添う外部空間が生まれるのだと思います。

外構は建物の付属品ではありません。

庭もまた建物の一部です。

そして建物と庭がつながったとき、

はじめて豊かな暮らしが始まるのだと思います。

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